「玉露」



 那由多先輩が家の中に入ろうとする玉露くんに声をかける。

 振り返る二人。一人は大きく目を開き、一人はきょとんとする。

 玉露くんはお母さんを家の中へ入れ、自分だけ外に留まった。



「なんで、ここに」

「わかるだろ? 宣言通り苹果とデートしたんだ」

「……!」



 戸惑った目がわたしに移る。



「したの?」



 彼の疑問に、首を縦に振って答えた。


 別にいいんじゃ、ないの……?

 玉露くん、今、何を考えてる……?



「……うん、まぁ。苹果ちゃんの合意があるなら、いいと……思う」



 あぁ、やっぱりいいんだ。

 那由多先輩は嘘をついていなかった。


 ……のに、どうしてだろう。


 よかった、って素直に感じない。