「……ほらな、言った通りだろ」

「え?」

「独り言だ」



 那由多先輩が勝ち気に笑う。

 こ、こんなかっこいい人とデートできたら嬉しいよ、誰でも。


 でもいいのかな。

 やっぱり、ちゃんと玉露くんに聞くべきじゃない……?


 悶々としていたら、するっと手を繋がれた。



「今からしようか、苹果」

「っ……」



 意識は手のひらに集中する。

 大きくて、角張っていて……わたしと違う。



「つ、剣先輩もいますよ」

「いや、もういない」

「うえっ!?」



 さっきまで彼がいたはずの場所を振り向く。忽然と姿を消していた。

 な、な……息ぴったりすぎる。



「最高なんだ、ウチの剣は」



 逃げられない状況を作る策士だ……っ。