王様の前に残された食べかけのショートケーキ。一口分だけ欠けていて、その後全く食べる気配がないあたり口に合わなかったみたい。

 わたしもショートケーキはあんまり好きじゃないからわかる。舌にクリームがまとわりついてくる感じが苦手。



「どうする。報告するべきと思うか?」

那由多(なゆた)様ご自身で決めるのがよいかと」


「なら言いたくない」

「私もそう思います」


「それを言えよ」

「すみません」



 な、なんか、側近が責められているような?

 結構真剣な話みたいだ。盗み聞くのはやめにしよう。

 さっさと食べて、玉露くんにアップルパイを届けなきゃ。



「じゃ、内緒にするってことで」

「はい」


「ぎゃ、!?」



 彼が立ち上がったのと、わたしが食べ終えたトレーを返却しようとしたのが同時。

 一人しか通れない通路の幅のせいで、盛大に体がぶつかり合う。