彼女の片想いの相手が着物に興味を持っていたから、買いに来てくれた。そして大翔も最近着物について勉強を始めたって言っていたよね。

 間違いない、彼女の好きな人は大翔なんだ。

「あのふたり、付き合っているのかな?」

「パイロットとCAでしかも美男美女だなんて、すっごくお似合いじゃない?」

「うん、すごくお似合いだよね」

 前にいた女性三人組の話にズキッと胸が痛む。

 私から見ても並んで歩くふたりはとてもお似合いだった。私なんかよりもずっと。

「やだ、なにこれ」

 今までに感じたことがない胸の痛みと、苦しさに襲われる。

 あまりの苦しさにふらつきながら近くのベンチに移動して腰を下ろした。その頃には大翔たちの姿はなく、人だかりも消えていた。

 それなのに脳裏には、さっきのお似合いのふたりが鮮明に焼き付いて消えてくれない。

 この感情はいくら恋愛経験がない私でもわかる。大翔のことが好きだからだ。好きな人が、私以外の人といる姿を見ていられないほどつらくて悲しいんだ。

 あんなに大翔の気持ちを信じることができず、自分が抱く感情に答えを出すことができずにいたのが嘘のよう。

 大翔の気持ちはわからないけれど、私はもう彼に恋してしまった。それも、どうしようもないほどに……。