「おばあちゃん以外とも、この店に来ていたのか?」

「うん、お兄ちゃんも一緒だったし……よく両親とも来ていた」

 断片的にしか思い出せないけれど、家族五人で来て食べた記憶はある。

「その時ね、えっと……たしかお兄ちゃんかな? 黒蜜を服に零して怒られちゃって」

「えっ?」

 なぜか大翔は驚いて目を丸くさせた。

「どうしたの?」

 不思議に思って声をかけると、彼は我に返って笑みを浮かべた。

「いや、なんでもない。ただ、栄臣にもそんな間抜けなエピソードがあったんだと思ってさ」

「そうなの、意外でしょ? しっかり者のお兄ちゃんだけど……」

 あれ? でも、黒蜜を零したのって本当に兄だった? でも男の子だったのは間違いない。家族以外とわらび餅は食べにきたことはないんだもの、お兄ちゃんで間違いないよね?

 それなのに、なぜこんなにも引っかかるのだろう。

 話が途中のまま考え込んでいると、心配そうに大翔が顔を覗き込んできた。

「悪い、亡くなったご両親のことを思い出させてしまって」

「え? あ、ううん、違うの大丈夫だから」

 私が黙り込んでしまったから、両親のことを思い出して落ち込んでいると思ったんだよね? 違うことを考えていたから申し訳なくなる。