大翔のことを知ることができたし、私の仕事に対する思いも理解してくれてすごく嬉しかった。

「家に着いたらまた連絡する」

「うん。気をつけて帰ってね」

「ありがとう」

 大翔は名残惜しそうに「今夜は温かくして早く寝ること」とか、「ちゃんと返事をしてくれよ」「次、デートで行きたいところ考えておいて」と言ってなかなか帰ろうとしなかった。

 でも話すことがなくなると、「おやすみ」と言って車を発進させた。

 先に家に入ってくれと言われたけれど、家まで送ってくれたんだもの、見送りくらいはしたい。そう言ったら大翔は嬉しそうにしていた。

「本当に大翔はなにを考えているんだろう」

 お見合いした経緯も気になるし、なぜ私との結婚にこだわるのかもわからない。そのくせ大切な人がいるみたいだし。

 それなのに、私に甘い言葉を囁く意味はなに?

 彼の気持ちが本物だと信じられずにいるというのに、ひとつだけ確かなことがある。

 恋をしたことがない私でもわかるほど、大翔に惹かれているって。

「あ、ジャケット……」

 大翔の車を見送って数分経ってから、ジャケットを借りたままと思い出した。

 優しくされると嬉しいのに、胸の奥がギュッと締めつけられてせつなくもなる。

 人生初のデートは、私に様々な感情を経験させてくれた。