「変なことって桜花と離れるのが寂しいって言ったこと? それのどこが変なんだよ」

「とにかく変なの!」

 一方的に言って素早く車から降りた。すると大翔は助手席の窓ガラスを開ける。

「なぁ、本気で寂しいんだけど」

 まだ言ってくる大翔が駄々をこねる子供みたいで、なぜか可愛く見えてしまう。

「桜花はなんとも思わない? せっかく会えたのにさ」

 本当、どうしてこうも私の心を乱すことばかり言って困らせるのだろう。

 音信不通になって心配したし、会いに来てくれた時、どれほど安心したか。でも本音をすべて打ち明けたらどんな反応をされるかわからなくて怖い。

 大翔は冗談で言っている可能性もあるし、ただ単に私の反応を見て面白がっている場合もある。

 それに他に想い人がいるのに、私と結婚しなくてはいけない理由があるのかもしれない。もし後者ならば、私がこんなにも大翔の言動に戸惑い、心を乱されていると知ったら困るんじゃない?

 彼の真意が知りたくて、開いた窓ガラスから見つめた。しかし、愛おしそうに私を見つめ返すだけで、なにを考えているのかまったくわからない。