お見合いを終え、上杉のおじさまと約束した通り大翔は私を自宅まで送ってくれた。すると一家総出で出迎えられた。

「久しぶりだな、大翔」

「あぁ。元気だったか? 栄臣」

 仲良さそうに話す兄と大翔の姿に、私は目を疑った。

「え? お兄ちゃん、大翔のことを知っているの?」

 びっくりしてふたりを交互に指差しながら聞くと、兄は白い歯を覗かせた。

「なんだ、桜花。会ったばかりで名前で呼んだりして。短い時間ですっかり意気投合したようだな」

 陽気に笑う兄にすぐさま「違うから」と否定するも、笑うばかりで兄はまったく聞いていない。すると兄に変わって兄と同い年のお嫁さんである雪乃(ゆきの)さんが説明してくれた。

「桜花ちゃんがたまたま店に出ない時に大翔君が来ていて、それで栄臣と仲良くなったの」

「そうだったんですね」

 たしかに私はご贔屓さんの家に訪問して着物の状態をチェックしたり、注文いただいた商品を届けに外に出ていることが多いから、たまたまそういう時に大翔が来ていて、私は会う機会がなかったのかも。

「大翔君、なにかと忙しいと思うけど桜花と会ってやってちょうだいね」

 祖母に言われた大翔は、真剣に面持ちで深く頷いた。