しかし、それがかえって若い世代には敷居が高いと思われているようで、顧客層は高い。
 だから私は若い人にも着物の良さを知ってほしくて、いつかその願いをなんらかの形で叶えたいと考えている。

 それに着物の伝統文化を世界に伝えたいという大きな目標もあった。そのためにもまずは国内で着物の良さを広めて、この先も着物を着るという文化を継承させていきたい。

 まだ店を持ちたいとか海外にどうやって広めるかとか具体的には決まっていないけれど、松雪屋で勉強をさせてもらいながら、方法を見出していきたいと思っている。

 それもあって昔から恋愛にはまったく興味がなく、二十五歳になっても初恋もまだだったりする。

 もちろん兄夫婦の仲の良さを毎日見ていて、いつかは結婚したいと思うけれど、それは心から好きになった人と出会うことが第一条件だ。

「もしかしたら今日のお見合い相手が、桜花の運命の人かもしれないわよ。まずは出会わないと好きな人もできないでしょ?」

「それはそうかもしれないけど……」

 出会いはいつ、どこで起こるかわからない。だから祖母の言うことはもっともだが、騙されて来たお見合いの席でそんな出会いがあるのかと思う。

「とにかくもう先方もこちらに向かっているのだから、一度会ってみなさい。なかなかの好青年で私は桜花に合うと思う人なのよ」