祖父と栄臣から聞いたところ、飛行機を見ても平気になったのは大人になってからで、それでもまだ乗れないという。

 そして俺の記憶に関しては思い出されることはなかった。

 家族には何度も桜花のことは諦めたほうがいいと言われ続けたが、会えない時間が桜花への恋心を募らせた。

 いつかきっと桜花が記憶を取り戻し、約束を果たしてくれると信じて俺はパイロットを目指した。

 祖父から桜花も幼い頃の夢を叶えるために奮闘していると聞き、その気持ちはますます強くなり、航空大学では優秀な成績を収めてトップで操縦士になるための様々な資格を取得した。

 晴れて国内大手の航空会社に入社し、今は副操縦士から機長に昇格するため、努力を重ねる日々だ。

 夢を叶えるイコール機長になることだと思っていたから、夢を叶えるまでは桜花が記憶を取り戻さない限り、会いに行かないと決めた。

 堂々と桜花に会えるまで我慢していたのだが、そうも言っていられなくなった。

 それは祖父から、桜花の祖母が桜花の見合い相手を探していると聞いたからだ。桜花の祖母も人が悪い。