時間差で桜花に言われたことを理解して、大きな声が出てしまった。

 カッコいいって桜花が言ったんだよな? 嬉しすぎてなかなか信じられずにいると、桜花は顔を近づけてきたものだから、思わずのけ反る。

「じゃあ大翔君がパイロットになったら、絶対に私を乗せてね」

「桜花ちゃんを?」

「うん! 大翔君がパイロットになって最初に飛行機を運転する時に私を乗せて」

 俺がパイロットになったら……。今まではこの家に生まれた以上は叶えることは不可能だと諦めていた。

 でも彼女はまるで俺が本当に夢を叶えるかのように言う。

「もちろん大翔君がパイロットになりたいことは、誰にも言わないよ。私と大翔君の秘密ね」

 人差し指を立てて「シー」と言う愛らしい姿に胸が痛くなる。

「楽しみだなー、大翔君が運転する飛行機に乗るの。あ、その時はヨーロッパに行きたいな。前にね、パパとママが世界中の人に着物を見てもらうためにヨーロッパに行ってきたの。だから私も最初はヨーロッパに行きたいなぁ。どんなところなんだろう」

 もしかして桜花は、ヨーロッパという国があると思っているのだろうか。夢を膨らませる桜花に笑みが零れる。

「私も大翔君に負けていられないね! 絶対にいっぱいの人に着物をたくさん着てほしいもん。一緒に頑張ろうね!」