幼い頃、私の両親とも仲が良くて頻繁に会っていたのにその記憶も抜け落ちていたことが申し訳なるほどに。

 上杉のおじさまとも、以前よりも仲良くさせてもらっている。そして会うたびに、うちの家族もだけれど大翔との結婚をそれとなく話題に出すようになった。

 いや、当然の流れだと思う。現に私たちはお見合いをしたわけだし。なにより幼い頃に結婚の約束までしていたのだから。

 もちろん私だっていつか大翔と結婚して、子供を授かりたいという気持ちがある。でもそうなるとロンドンへの出店が難しくなる。

 結婚したらパイロットとして世界中を飛び回る大翔を支えてあげたいと思うし、仕事も続けていきたい。

 でもそれは国内で生活するうえでできる話だ。ロンドンへ出店となったら、しばらくはロンドンが拠点となるだろう。

 離れて暮らすのに結婚などできないし、結婚したとしても大翔に迷惑をかけることになるもの。だからすぐに返事をすることができなかったんだ。


「幸助ー! 元気だったか?」

 帰ってくるなり幸助の元へ駆け寄ってきたが、幸助は私の膝の上でブロック遊びに夢中で手で邪魔しないでというように兄の顔を押した。

「どうした? 一日ぶりのパパだぞ、嬉しくないのか?」

 ショックを受ける兄に苦笑いしながら、雪乃さんが「ただいま、幸助」と声をかけると、すぐさま反応した幸助は私の膝から降りて雪乃さんに足にしがみついた。