「んっ」

 息苦しさを覚えたのは目を開けた彼は、寝起きはいいほうらしくすぐに状況を理解したようだ。

「桜花、俺の鼻をつまんだだろ?」

「え? すごい、わかったの?」

「あぁ。お返しだ」

「ひゃっ」

 そう言うと大翔は私の頬を摘まんだ。

「い、いひゃい」

 頬が伸びた私の顔を見て大翔は笑うのだからひどい。

「朝から痛いんですけど」

「それは俺の台詞だ。鼻が痛い」

「だっていつもやられてばかりだから、たまにはお返しをしようと思ったんだもん」

「可愛く言っても許さないぞ」

 すると大翔は思いっきり私を抱きしめた。

「もう、ちょっと大翔?」

「もう少しこのまま。……いいな、目覚めてすぐに桜花に会えるって」

 それは私も同じだ。朝一番に会えるのが大翔だなんて、すごく幸せだって。

「だけど、甘い一夜を過ごした次の日の朝、さっそく言い合いするっていうのが俺たちらしいな」

「たしかに」

 抱き合ったまま、どちらからともなく笑ってしまう。