だけどそれは嘘で、物心ついた頃から好きだった飛行機のパイロットになりたいと思うようになった。

 しかし、周りから「おじいちゃんとお父さんと同じように、大翔君も外交官になるのね」「将来が楽しみだ」と言われ続けてきた。

 両親と祖父も「まだ幼いから将来はわからない」と周囲に漏らしながらも、期待を寄せられているのを子供ながらに感じ取り、ふたりとは違う仕事をしたいと言い出せずにいた。

 俺が将来、パイロットになりたいと言うことは誰も知らない。それを桜花に伝えてもいいのかと迷いが生じる。

 もしかしたら俺がパイロットになりたいことを祖母に言ってしまうかもしれない。そうなれば祖母から俺の家族に伝わる可能性もある。

 それが怖くて言えずにいると、桜花が俺の顔を覗き込んできた。

「大翔君?」

「あ……」

 俺を見つめる表情は心配そうで、少しでも桜花のことを疑った自分が恥ずかしくなった。

 桜花は優しくて思いやりがある子だった。悪いことはしないし、一緒に遊んでいる時だっていつも俺が楽しんでいるか気遣ってくれた。