テレビで何度か見たことがあるけれど、実際のファーストクラスの席は思った以上に豪華だった。

 まるで個室のような造りになっていて、座席の座り心地も抜群。アメニティも充実しており、初めての空の旅は快適なものになりそう。

 搭乗するまでは緊張でいっぱいだったのに、大翔のおかげで和らいだよ。

 今の状態なら大丈夫だよね。緊張もしなくなったし、恐怖心もない。とにかく空への旅を楽しもう。

 そう自分に言い聞かせて出発時間を待つ。そして、その時はついにやってきた。

 客室乗務員が離陸前の最後の安全確認をおこない、飛行機はゆっくりと動き出した。窓の外からは、飛び立っていく飛行機が見える。あと少しで私が乗る飛行機も空を飛ぶんだ。

 期待と不安で心臓の鼓動が速くなる。

 ゆっくりと滑走路を進んでいた機体は停止し、大きなエンジン音が轟いた。そして次の瞬間、急加速で動き出す。

「きゃっ」

 思わず小さな悲鳴が漏れる。大きな重力が身体に圧し掛かり、思わず目を閉じた。そして次の瞬間、なんとも言えぬ浮遊感に襲われる。

 機体が浮き、目を開けて窓の外に目を向ければ空に向かっていた。

「すごい……」

 機体は早いスピードで空へと進んでいき、すぐに街並みが小さくなっていく。

 まだ信じられないけれど私、飛行機に乗れているんだよね? 地上から離れて空に向かっているんだ。