「あぁ。だけど、医師と栄臣たちの了解を得てからだぞ? それと少しでも搭乗前に怖いと思ったら乗らないでくれ。……フライト中、俺は桜花の元へ駆けつけることはできないから」

「うん、わかった。ありがとう、大翔」

 大翔が連れて行ってくれると言ってくれた。あとは家族と医者から許可をもらうだけだ。

 次の受信日にさっそく医者に相談したところ、最初は難色を示されたが私の思いを聞いて許可を出してくれた。

 もちろん兄をはじめ、雪乃さんも祖母にも大反対されたが、大翔も一緒に説得してくれた。

 大翔が「責任は俺がとります。だからどうか桜花の気持ちを一番に考えてあげてください」と言ってくれた時は、涙が零れてしまった。

 まだ出会って一年も経っていないのに、ずっと一緒にいたように私のことを理解してくれる。そんな大翔に出会えて私は本当に幸せだと思う。

 大翔が次にロンドン便に搭乗するのは、一ヶ月後だとわかった。その日に向けて私も飛行機に乗るために心の準備を進めていった。

 この一ヵ月の間に、もしかしたら記憶が少し戻るかもしれないと思っていたけれど、そんなことはなかった。

 病院にも二回通ったが大きな成果はない。でも幸いなことに頭痛の頻度は減っていた。飛行機に乗っている間も頭痛が起こらないことを祈るばかりだ。

 そして迎えたロンドンへ向かう日の朝。私はすっきり目覚めることができた。