「だけどちゃんと治療は続けていくつもり。ただ、本当に焦らずにいこうと思うの。その分、トラウマだけは克服したくて。それで両親が飛行機から見たオーロラを私も見たいし、大翔とロンドンの綺麗な街並みを散策したい」

 初めて飛行機に乗るなら、その夢も叶えたい。

「お願い、大翔。私を空に連れていって」

 初めて空に行くなら、大翔と一緒がいいの。大翔が連れていってくれるなら乗れる気がするから。

 その思いで言うと、大翔は小さく息を吐いた。

「俺だって桜花が初めて飛行機に乗る時は、絶対に俺が連れていくと決めている」

「じゃあっ……!」

「だけど、まずは国内線からにしないか? 国際線はフライト時間が長いし、その分、空の上でなにかあってもすぐに地上に戻ることはできないんだ」

 大翔の言いたいことは充分理解できる。それでも、やっぱり私は初めて飛行機に乗っていくならロンドンがいい。

「わかってるよ。だけどね、オーロラを見たい、ロンドンの街並みを歩きたいって目標があるほうが乗れる気がするの。それにロンドンは両親が最後に乗った便でもあるでしょ? 同じ行き先に向かうことができたら、トラウマも克服できる気がするの」

 どうにかわかってほしくて懸命に訴えると、大翔は両手を挙げた。

「わかった、降参だ」

「本当?」