あれから看護師に家族五人で写真を撮ってもらった。それから兄がこう言ったんだ。「これから家族五人で、たくさん思い出をたくさん作っていこう」って。

 兄も私も早くに両親を亡くし、家族みんなで過ごした思い出が少ない。だから自分に子供ができたら、数えきれないほどの思い出を作ってあげたいと言っていたそう。

 雪乃さんにこの話を兄から聞いて、惚れ直しちゃったと惚気られちゃったけれど。……でも、兄の気持ちが痛いほど理解できた。

 私もいつか結婚して子供が生まれたら、色々な場所に連れていって多くの時間を一緒に過ごしてあげたいと思っていたから。

 それは甥っ子であるこの子に対しても同じ。叔母としてできることを全部してあげたい。

 それこそみんなで旅行にも行きたいし、いつか……大翔と結婚する未来がきたら、全員で遠くに行きたい。そのためにも、私には乗り越えなくてはいけない壁がある。

「ねぇ、大翔。……今度、ロンドン便に搭乗するのはいつかわかる?」

「え、どうしたんだ急に」

 突然聞かれた大翔はびっくりして私を見つめる。

「初めて飛行機に乗るなら、大翔が操縦するロンドン行きの便に乗りたいなって思って」

「……待ってくれ、本気で言っているのか?」

「うん」

 混乱する大翔に自分の思いを伝えていく。