「うん、お店のことは心配しないで、雪乃さんのことをよろしくね」

 タクシーを見送り、祖母と一度帰宅をして準備をしてお店へと向かった。


「ありがとうございました。お気をつけてお帰りください」

 ご贔屓さんを見送り、一息ついたところで時間を確認すると十六時を回っていた。

 客足も少なくなってきて、祖母と早くに店を閉めようと決めた。

「まだ生まれていないみたい」

 閉店作業を進め、戸締りを済ませて急いでタクシーに乗り込んだ。そこで兄からの連絡を確認すると、一時間前にメッセージが届いていた。

「初産だしね、栄臣も生まれるまでに二日間もかかったんだよ」

「そうなの?」

 雪乃さん、すごく痛そうだったのにあれが二日間も続くってこと?

 妊娠初期からつわりがひどく、雪乃さんがつらそうにしているところも見ているため、改めて出産するということはどれほど大変なのか痛感する。

「もしかしたら今夜はまだ生まれないかもしれないね」

 とりあえず様子を見にいって、まだかかりそうなら一度家に戻り、入院の準備などをしてこようとなった。

 産婦人科医院に到着して雪乃さんの名前を告げると、対応してくれた看護師が笑顔で言った。

「おめでとうございます。つい先ほど元気な男の子を出産されたばかりですよ」