大翔からは見えていないと思うけれど、彼が乗る飛行機が空に向かって飛び立つ時、手を振って見送っていた。

「大翔、空高く消えていったな」

「うん」

 パイロットになるまで多くの訓練を積んできたとわかってはいるけれど、空の旅ではなにがあるかわからない。

 だから無事に帰ってきますようにと、いつも祈ってしまう。

「ねぇ、栄臣。私たちの子も呉服屋の若旦那じゃなくて、パイロットになりたいって言われたらどうする?」

「えっ! そこはやっぱり松雪屋を継いでほしいところだが、子供には子供の人生がある。応援するしかないだろう」

 唸りながらも理解を示す兄に、雪乃さんも「そうだね」と頷いた。

「私も栄臣も好きだからこの仕事をしているように、子供にも好きなこと、興味があることに果敢にチャレンジしてほしいね」

「そうだね」

 私と祖母が一緒にいるというのに、ふたりっきりの世界を作り始めた。

「孫夫婦の仲が良いことはいいことだが、見ているこっちが恥ずかしくなるね」

「本当だよ」

 祖母とそう言いながらも、ふたりの仲の良さを見せつけられるたびにこっちまで幸せな気持ちになれる。

 赤ちゃんが生まれたら、もっと幸せが増えるんだろうな。