「雪乃、お腹は大丈夫か?」

「うん大丈夫。赤ちゃんも飛行機を見られて嬉しいのか、すごく元気でさっきから蹴られているの」

「本当か? どれどれ」

 すると兄は私たち以外誰もいないとはいえ、外だというのに雪乃さんのお腹に耳を当てた。

「おぉ、すごい元気だな」

 ちょうどお腹を蹴った所らしく、兄は嬉しそう。

 雪乃さんは臨月に入り、いつ生まれてもおかしくない。赤ちゃんは順調にお腹の中で成長しているようで、性別は男の子らしい。

 医者から適度な運動を勧められたようで、兄と雪乃さんは朝と夕方、ふたりで家の近所を仲良く散歩している。

 今日は私が空港に飛行機を見に行ってくると言ったところ、せっかくだから家族で見に行こうとなったのだ。

「あ、五時三十五分発の便だから大翔が操縦しているんじゃないか?」

 滑走路を移動する一機の飛行機。これから北海道へ旅立つ飛行機に大翔が乗っている。

「うん、あの飛行機だと思う」

 最近の私の日課は、大翔が操縦する飛行機の離着陸の時間が朝晩だったり、私が休みの日だったりすると、こうして展望デッキに見に来くることだ。大翔に毎日フライトの時間を聞いて、足繁く通っている。