「お疲れ、こんな遅くまで仕事をして身体は大丈夫か? 栄臣ひとりに任せて桜花は早めに上がってもよかったんじゃないか?」

 心配する大翔の横で兄は「おい、俺がいることを忘れるな!」と鋭く突っ込んだ。

「それに俺がひどい奴みたいな言い方はやめろ。俺だって桜花の心配をしていたさ! 何度も早く帰ったらどうだとも声をかけたぞ」

「そうなの、お兄ちゃんに何度も聞かれたけど平気だったから大丈夫だよ」

 兄を庇うように言うと、大翔は面白くなさそうに顔を渋めた。

「あまり栄臣を庇わないでくれ。……妬ける」

 ボソッと呟いた一言に耳を疑う。えっと、つまり大翔は私が兄を庇ったことに対して嫉妬したってこと?

「実の兄妹の俺にヤキモチとかさすがにヤバいだろ。おい、桜花! こんな器の小さい男のどこがいいんだ? 一度考え直したほうがいいぞ!」

 なんて言う兄の言葉は頭に入ってこないほど、照れている大翔に目が釘付けになる。

 どこか少年っぽい表情にも胸がきゅんとなってしまう。――しかし次の瞬間、激しい頭痛に襲われてふらついた。

「桜花っ」

 すぐに近くにいた大翔が身体を支えてくれた。

「どうした、大丈夫か!?」

「桜花!」