彼女との出会いは五歳の誕生日を迎えて少し経った頃。

 祖父に着物を仕立ててやると言われ、初めて松雪屋の暖簾をくぐると、真っ先に出迎えてくれたのは愛らしい女の子だった。

「いらっしゃいませー」

 笑顔で俺と祖父を出迎えてくれたのが桜花だった。眩しい笑顔で両親の真似をしてだろうか、手厚くもてなしてくれた。

「どうぞお客様、お茶です」

 うしろで桜花の母がハラハラしながらも、桜花が俺と祖父のジュースとお茶を運んできてくれたことをよく覚えている。

 俺たちに飲み物を渡して満足げに笑っている顔が、すごく可愛かった。

 当時の俺は人見知りで、桜花と仲良くなりたいのに自分から声をかけることができずにいた。それにいち早く気づいてくれたのが祖父で、助け舟を出してくれたんだ。

「桜花ちゃん、この子は私の孫で大翔っていうんだ。桜花ちゃんと同じ五歳なんだ。仲良くしてくれないか?」

 その最中、俺は祖父のうしろに隠れて彼女の様子を窺う。すると桜花は目をぱちくりさせた後、満面の笑みを見せた。

「うん、もちろんだよ! よろしくね、大翔君!」

 小さな手が差し伸べられ、俺は緊張しながらも桜花の手を握った。

「う、うん!」