「やだ、五歳の栄臣ってば可愛い」

「そうだろう? きっと生まれてくる子供も男の子だったら俺のように愛らしくなるに違いない」

 この日の夜、家族みんなでテーブルを囲んで見ていたのは昔のアルバム。

「ほら、これが桜花の生まれた日に病院でみんなで撮った写真だよ」

 祖母が指さす写真を見ると、母が生まれたての私を愛おしそうに抱き、その傍らに父と兄が寄り添っていた。

 祖母は泣いたのか写真でもわかるほど目が赤い。

「ばあちゃん、この時すっげぇ泣いていたよな? 俺、子供ながらに引いたし」

「なんだい、引いたなんてひどい話だね。子供は息子のみ、ひとり目の孫も男児で私にとっては待望の女児孫だったんだ。そりゃ泣くだろう」

 兄と祖母のやり取りに、私と雪乃さんは笑ってしまった。

 どうして急に昔のアルバムを開いているかというと、医者に昔の思い出に触れるのも記憶を取り戻す上でいいことだと言われたからだ。

 その他にも昔よく遊んでいたおもちゃに触れたり、よく出かけていた場所を訪れたりするのもいいと言っていた。

 今までアルバムの存在は知っていたものの、両親の写真を見たらトラウマが悪化しそうで怖くて見る勇気がなかった。