「桜花」

 私の名前を呼んだ彼に腕を掴まれ、びっくりして顔を上げたら頬に温かな感触を感じた。

私の頬にキスを落とした彼は、愛おしそうに見つめてくる。

「もっと俺と一緒にいたいって思ってくれて嬉しいよ、ありがとう。もちろん俺だってもっと桜花と一緒にいたいと思ってる。だから今度会ったらたくさんイチャイチャしよう」

「いっ!? イチャイチャ!?」

 聞き捨てならない言葉に大きな声が出てしまった。そうしたら彼は満足げに笑う。

「あぁ、イチャイチャするぞ」

「な、なにその宣言は」

「言っておかないと、桜花は緊張すると思ってさ。……次に会えるのを楽しみにしてる」

「……うん」

 私も次に会えるのが待ち遠しい。どうしてこんなに好きになっちゃったんだろう。

 最後に彼は不意に私の唇に触れるだけのキスを落として、顔が真っ赤になっているであろう私を見て満足して帰っていった。

「いつも突然なんだから」

 いや、突然ではなくてもまだまだ彼とキスすることに慣れない。もしかしたら一生慣れる日はこないのかもしれないと思うほど、胸に手を当てれば心臓は驚くほど速く脈打っている。頬も熱いし、しばらく家に入れそうにない。

 色々と落ち着くまで外の空気に触れてから家に入った。