「その人と私がどんな関係で、どれだけの時を一緒に過ごし、思い出を作っていたのかを知りたい。それでいつか会うことができたら、今まで忘れていてごめんねって伝えたいんだ。……まぁ、向こうは私のことを忘れている可能性もあるけどね」

 夢に出てくるのは男の子だけれど、必ずしも私が記憶を失った人が異性とは限らない。同い年なのか年上か年下かもわからない。

 もしかしたら、それほど親しい間柄ではなかった可能性もある。その証拠に今までそのような人に出会ってこなかったわけだし。

 それなのに思い出したいのは、大翔に出会ったからだ。大翔が私の仕事に対する気持ちを理解してくれたように、私も彼の仕事のことを知りたい。どんな景色を見て空を飛んでいるのか見たいの。

「なにより私ね、大翔が操縦する飛行機に乗りたいの。両親も見たオーロラを見て、この前大翔がロンドンの街並みの写真を送ってくれたでしょ? あそこに大翔と一緒に行って散策してみたい」

「桜花……」

 私の名前をポツリと呟いた彼の頬には、一筋の涙が流れた。

「え……ちょっと大翔、どうしたの?」

 思いもよらぬ彼の涙に困惑してしまう。

「いや、すまない。なんでもないんだ」

 そう言って彼は涙を拭い、笑顔を見せた。