私の肩から手を離して混乱する大翔に、順を追って説明していく。

「最近ね、ある夢を見るようになって頭痛も頻繁に起こっていたの。それをお兄ちゃんたちに相談したら、その……私には両親を失ったショックで、ある人の記憶だけ消えちゃっているんだって。だから、どうしてもその人との思い出を取り戻したいの」

 私の話を聞いて大翔は目を見開いた。

 そうだよね、私が記憶喪失だったなんて聞かされたら驚くよね。

「でも生活には支障がないって言われたから大丈夫。ゆっくり思い出せばいいって言われたし。それに記憶を取り戻すことで、飛行機へのトラウマも克服できる気がするんだ」

 心配させたくない一心で早口で捲し立てたところ、彼は大きく瞳を揺らした。

「桜花の気持ちはわかった。でもその途中、桜花の身体に悪い影響が出る可能性だってある。……リスクがあったとしても思い出したいのか?」

 それは医者にも言われたことだ。だから記憶を失ってから十年近く祖母たちは私に事実を告げなかったのだろう。

「うん、それでも私は思い出したい。きっと亡くなった両親も望んでいると思うの」

 自分たちのせいで私が苦しんでいると知ったら、空の上で安心して見守っていられないでしょ?