だって忘れたままなんて嫌だもの。私は誰との思い出の忘れてしまったのかちゃんと思い出したい。

 私がすぐに答えたのを聞き、三人は安心したように顔を見合わせた。

「あぁ、じゃあそうしろ。だけど! もし気分が悪くなったりつらくなったりしたら無理することないからな? ……向こうだってそれを望んでいない。むしろ桜花が無理して思い出そうとしていると知ったら悲しむ」

「そうね。小さな変化にも私たち家族に逐一報告すること。いい? 桜花」

「うん、わかった」

 でも、私に無理してほしくないと思うほど優しい人だと兄から聞いてしまった今、もっと思い出したいという気持ちが強くなった。

 それにその人のことを思い出すことが、トラウマへの克服に繋がる気がするの。

 それからみんなで食卓を囲んで朝食を食べた後、私は仮眠をとってから病院へと向かった。


 祖母に教えてもらった病院を受診したところ、担当してくれた医師は私が記憶喪失になった際にも診てくれた人だった。

 まずはなぜ私が記憶喪失になったのかを丁寧に説明してくれた。

「心理的記憶喪失、または解離性記憶喪失とも呼ばれており、深刻な心理的ストレスが原因と見られています。松雪さんの場合、ご両親を突然失ったストレスで一部の記憶を失い、飛行機に対してのトラウマが生まれたものだと考えられます」

 次に私の今の症状を伝えたところ、医師は少しの時間考え込む。