「雪乃さん、最高です」

「それはよかった」

 お皿に盛りつけたところで、急に雪乃さんはジッと私の顔を見つめてきた。気になって玉子焼きを飲み込んでから「どうしたんですか?」と訊ねる。

「桜花ちゃん、目の下に隈ができているじゃない」

「嘘、本当ですか?」

 咄嗟に手で目元を触れてみるが、当然触った感じで隈ができているかわからない。

「本当。目が冴えちゃったって言っていたけど、今からでも少し寝てきたら? 今日も仕事でしょ?」

「いえ、横になっても眠れないと思うので大丈夫です」

「でも……」

 雪乃さんは心配そうに私を見つめてくるから、どうしたものかと頭を悩ませていると、兄が起きてきた。

「おはよう。……って、どうしたんだよ雪乃。そんな深刻な顔をして」

 愛しの妻の表情を見て、兄は焦ってキッチンに入ってきた。

「なにか心配事でもあるのか? いや、どこか痛むとか? それともお腹の中の赤ちゃんが暴れているのか?」

 兄には雪乃さんしか見えていないようで、私の存在を完全に忘れてテンパッている。