「こう言わないとキミは俺と会ってくれないだろ? だったらいくらでもズルくなるさ。……今後も両家の円満な関係を続けるためにも、ここはキミが折れて祖母の顔を立てるべきじゃないか?」

 なにそれ、本当にズルい。それを言われたら頷くしかないじゃない。

「俺が全力で好きだと伝え、俺のことを知っても好きになれないのなら諦める。だからチャンスをくれ」

 もう断る術を完全に失った。彼の言う通り、よく考えれば上杉のおじさまは松雪屋のご贔屓さんで、長年の付き合いがある。

 私のせいで松雪屋の大切なお客様を失うわけにはいかない。だったら、腹を括ろう。

「わかりました。……違う、わかった。上杉さんがどんな思惑を持って私に好意を抱いていると嘘を言っているのか、それを知りたいから今後も会う」

 今後も会うなら、彼が言っていた通り同い年だし敬語は必要ないだろうと思い、ため口で話したら彼は苦笑いした。

「ひどいな、俺の気持ちを疑っているのか?」

「当然でしょ? なにか理由がなければ会ったその日に私を好きになるなんてあり得ないから」