口の中で逃げても彼の舌はすぐに私の舌を搦めとる。次第に逃げることができなくなり、必死にキスに応えている自分がいた。

 どれくらいの時間、口づけを交わしていただろうか。いつの間にか私は彼の背中に腕を回していて、よりいっそう身体を密着させてキスに夢中になっていた。

 やっと唇が離れたのは、すっかりと息が上がった頃だった。最後に名残惜しそうに唇を離した彼は、大きく息を吐きながらギューッと私を抱きしめた。

「なぁ、どうしたらいい?」

「な、なにが?」

 主語のない問いかけに呼吸を整えながら聞くと、さらに強い力で抱きしめられた。

「このまま桜花を家に帰したくなくて困ってる」

「帰したくないって……」

 途中まで復唱して、どういう気持ちで大翔が言ったのか理解できて一気に身体中が熱くなる。

「そ、それは私も困る」

 もちろん彼が好きだからいつかは……とは思うけれど、キスだけでこんなにドキドキしているのに、その先に進むことなど今はまだ考えられない。

「わかってるよ、今はただ桜花が俺を好きになってくれただけで十分だ。いくらでも待つ。だから今こうして必死に我慢してる」

「えっと……なんかごめんね?」