「キス、してもいい?」

 だけど甘い声で懇願されたら簡単に絆される。

「だめか?」

 ダメ押しと言わんばかりに上目遣いで言われたら、ノーとは言えなくなる。でもはっきりと言葉にして「いいよ」とは言えなくて、小さく首を縦に振った。

 私の小さな合図はちゃんと大翔に伝わったようで、彼の指が私の唇をなぞる。

「桜花……」

 そして愛おしそうに私の名前を呼びながら、ゆっくりと彼の顔が近づいてきた。心臓は本当に壊れてしまいそうなほど激しく動いていて、ドキドキも止まらない。

胸は苦しくてパニックなのに、それ以上に大翔とキスをしたいという思いが強くなっている。

 覚悟を決めてギュッと瞼を閉じると、大翔はクスリと笑った。

「どうしてこうも可愛いかな。……本当に困る」

「えっ? んっ」

 ボソッと呟かれた言葉に目を開けた瞬間、視界いっぱいに大翔の綺麗な顔が広がった。それと同時に唇に感じた温かな感触に息が止まる。

 少しして唇を離した大翔は、私を見て目を細めた。

「なんだよ、その顔は」

 両頬を手のひらでグリグリされ、我に返る。

「ちょ、ちょっとやめてよ」

 すかさず彼の手を掴むと、「やっといつもの桜花に戻った」と言われてしまった。

「緊張した?」

「……当たり前でしょ?」