「まずは誤解を解きたい。俺は大場とふたりで食事に行く約束などしていないし、それは彼女の勘違いだったんだ。上司に誘われて三人で行くという認識で了承したまでであって、決してふたりで行くとは言っていない」

「そう、だったんだ」

 じゃあ大場さんが言っていたことは違ったんだ。

「それに俺が好きなのは桜花で、この先も桜花以外の女性を好きになるつもりはない」

 すると大翔はゆっくりと顔を上げて、まっすぐに私を見つめた。

「桜花を愛する気持ちは、そう簡単に変わるものではないとわかってほしい」

「大翔……」

 熱い瞳を向けられ、胸がトクンとなる。

「桜花は俺と大場が仲睦まじそうに歩いていたと言っていたが、俺は決してそんなつもりはなかった。あの時は大場が着物に興味があるというから、桜花の若い世代にも着物を広めたいっていう夢の手伝いを少しでもできるかもしれないと思ったら、嬉しくなっていただけだ。それほど俺はいつも桜花のことで頭がいっぱいなんだ」

 なに、それ。本当に大翔ってどうして簡単に私が恥ずかしくなることを言えるの?

「いつも俺は必死で、桜花に好かれたい一心でどうしようもない。……だから早く俺を好きになってほしい」