「いや、それは……」

 ここまで協力してくれたわけだし、話さないわけにはいかないと思って一昨日の出来事を会沢さんに伝えた。

 すると俺の話を聞いた会沢さんは急にニヤニヤし出した。

「なんだなんだ、俺はてっきり上杉の一方通行かと思ったが、そうでもないようで安心したよ」

「どういうことですか?」

 意味が分からず聞き返すと、会沢さんは箸の先を俺に向ける。

「だって桜花ちゃん、お前と大場がふたりっきりで食事に行くと聞いて嫉妬したんだろ?」

 嫉妬? 桜花が? 思いもがけない話にフリーズしてしまう。

「なんだよ、その顔は。まさか言われた時点で桜花ちゃんが嫉妬しているって気づいていなかったのか?」

「それは……」

 気づくわけがない。ずっと俺の片想いだと思っているし、まだ桜花が俺を好きになってくれたとは夢にも思っていなかったから。

「そうか、じゃあ戻ったら早く会いに行って誤解を解いて、彼女の気持ちをたしかめてこい」

「……はい」

 そうだ、まずは桜花に会って大場とのことは誤解だって説明しなければいけない。そして俺は桜花が好きで、どうしようもないほど愛しているって伝え、今後も他の女性とふたりっきりで食事に行くなど絶対にあり得ないこともわかってもらおう。

 それとできたらなぜ桜花は泣いたのか、その理由を聞かせてほしい。

 それから会沢さんとタルトを買いに行き、折り返し便の準備に入った。