「とにかく休み明け、彼女に会ったら聞いてみる。もしかしたら俺の知らないところで接点があったのかもしれない」

「そうしてくれ。……しかし、本当にその大場さんって人とはなんの関係もないんだよな?」

 俺が昔から桜花一筋だと知っているくせに疑い深い栄臣は、ジロリと俺を睨みながら聞いてきた。

「当たり前だろ。ただの職場の同僚だ」

「それならいいが……」

 言いかけながら栄臣は時間を確認したところ、目を見開いた。

「まずい、もうこんな時間だ! 栄臣、店を閉めるから早く出てくれ。あ、今回の件に関してはちゃんと事後報告しろよ! 早く誤解を解いて桜花の不安を拭ってやってくれ」

 どこまでも妹想いの栄臣は、慌ただしく戸締りをして鍵を閉め、「また連絡する」と言って去っていった。

 俺も栄臣の姿を見送り、車を停めた近くのパーキングを目指して歩を進めていく。

 その間、どうしてもさっきの桜花の泣き顔が頭から離れず、胸が痛んだ。

 桜花の泣く姿を見たのは、ご両親が亡くなった時以来だ。涙を流すほどつらいことは絶対にさせたくない、もう二度と桜花を悲しませないよう俺が守っていきたいと思っていたのに、俺が泣かせたんだよな?

 それについてこないでと言われるほど嫌われた可能性がある。