理由を聞こうと顔を覗き込んでくると、彼は私の答えを待っている。

「私、昨日見ちゃったの! 大翔が大場さんと仲睦まじく歩いているところを」

 大きな声で言ったら、大翔は「どうして桜花が大場のことを知って……?」と、戸惑い出した。

 その姿を見て、やっぱり大場さんが言っていたことは間違っていなかったのだと疑問が確信に変わっていく。そうなったら止まらなくなった。

「大場さんとふたりっきりで食事に行くんでしょ?」

「ちょっと待ってくれ、なんで俺と大場がふたりで食事に行く話になっているんだ?」

 頭を抱える姿にさえ苛ついてしまう。

 兄はというと、どうしたらいいのかわからないといった様子で狼狽えていた。しかし兄を気遣う余裕は私にはない。

「もう隠さなくていいよ。……どんな理由で私との結婚を望んでいるのかわからないけど、結婚する気がないならもう私にかまわないで……っ!」

 感情は昂ぶり、いつの間にか涙が零れ落ちた。

「桜花……?」

 困惑しながらも大翔は腕を伸ばして私の涙を拭おうとしたものだから、咄嗟に彼の腕を払いのけた。