やめて、まるで私を心配しているかのように言わないで。

 いつもだったら嬉しくて胸がいっぱいになる大翔の言葉も、今はつらくてたまらない。どうしても大場さんの姿が頭をちらつく。

「桜花、大丈夫だったのか?」

 兄から私へと視線を移し、心配そうに言ってくるから胸が苦しくてたまらない。

「トラウマを克服するために協力できることはなんでもするから、遠慮せず言ってくれって言ったよな。今度また空港に行きたいと思ったなら俺を頼ってくれ。……心配なんだ」

 切なげに放たれた一言に想いが溢れ、自分の感情がコントロールできなくなる。

 本当に大翔は私の心配をしてくれているの? 本当は大場さんのことが好きなのに、上杉のおじさまの手前、私との結婚を望んでいるかのように振る舞っているだけで、時期がきたら私との縁談をなかったことにしたいんじゃない?

 考えれば考えるほどマイナスなことばかりが浮かんでいく。

「俺は桜花の力になりたい。それにひとりよりふたりのほうがトラウマも乗り越えられると思わないか?」

 優しい眼差しを向けて言われた言葉に、私の醜い感情は溢れてとめどなく溢れ出た。

「お願いだから優しくしないで」

「えっ?」

 震える声で絞り出した言葉に、大翔は目を丸くさせた。

「桜花、どういう意味だ?」