「出かけたくないわけじゃないよな。お前ら、あれだろ? 喧嘩したんだろ?」

「え? 喧嘩? 俺と桜花が?」

 寝耳に水な話に大翔は困惑している様子。その姿を見て兄も戸惑い始めた。

「え? お前たち喧嘩しているわけじゃないのか? じゃあ桜花、やっぱり昨日空港でなにかあったのか?」

 兄が探るような目を向けて言った一言に、大翔は大きく反応した。

「空港って、桜花が空港に行ったのか!?」

 びっくりしたようで、大翔は私と兄を交互に見る。

「あぁ、そうなんだよ。昨日、恐怖心を克服するためにひとりで空港に行くって言って出かけたんだけど、帰ってきてから元気がなくてさ。最初は空港まで行けなかったのかと思ったけど、違うって言っていたが、やっぱり無理だったのか?」

「いや、そもそも桜花をひとりで空港に行かせるなよ。もし桜花になにかあったらどうするんだ!」

 いつになく厳しい口調で言う大翔に、兄はたじろいだ。

「いや、俺も雪乃もばあちゃんも、みんな一緒に行くって言ったんだぞ? でも桜花が大丈夫だって言うから、俺たちは桜花を信じて送り出したまでで……」

「そうだとしても、なにがあるかわからないだろ!?」