だって私、大翔の本当の気持ちを知らないし、言われた言葉がすべて事実だとしても信じることができないもの。

 なにより自分に自信がない。こんな私が本当に大翔に好かれているのかわからないから。

 それなのに悔しいと思うのは、嫉妬からくるものだろうか。

 だって普通は好きな人がいたら、その人以外とふたりっきりで食事には行かないよね。そんなことないの? 私が普通じゃない?

 ううん、やっぱり嫌だよ。大翔が私以外の女性とふたりで過ごすと考えるだけで悲しくなる。

「大翔の気持ちがわからないよ」

 でも大場さんは嘘を言っているようには見えなかった。それじゃ本当に大翔と食事に行く約束をしたってことだよね。

 グルグルと考え込んでしまっていると、お客様が来店されて我に返る。

「いらっしゃいませ」

 今は仕事中なんだから考えないようにしないと。

 そう自分に言い聞かせるが、大場さんの言葉がなかなか頭から離れてくれず、心が落ち着かなかった。


 十六時半過ぎ、最後のお客様を送り出して暖簾を下げた。

「今日は疲れたな、お疲れ様」

「うん、お疲れ様」

 暖簾を片づけながら自然と深いため息が漏れる。すると兄が急にニヤニヤしながら近づいてきた。