「私のことを調べたんですか?」

「はい、もちろん。だってずるいじゃないですか。私はずっと上杉さんのことが大好きだったのに、家族に無理やり進められたお見合いで出会ったあなたと結婚するかもしれないなんて。私のほうが見合っているし、公私ともに上杉さんを支えられると思いませんか?」

 自信たっぷりに言う彼女に対して、私はなにも言い返すことができなかった。

 悔しいけれど、大場さんの言う通りだ。並んだら彼女のほうが大翔に見合っているし、同じ職種な分、彼の仕事を理解することができる。

「上杉さんも家族に言われて仕方がなくお見合いを受けて、渋々あなたに会っているんだと思いますよ。そうでなければ、私の誘いを受けるとは思いません。上杉さんが可哀そう」

 ため息交じりに言われた言葉に、ズキッと胸が痛む。

「お願いですから、上杉さんを解放してあげてください。あなたたち家族がどんな関係なのか私にはわかりませんが、当人の気持ちを無視して結婚をすすめるなんて最低ですからね。なにより今は上杉さん、私といい感じなんです。くれぐれも邪魔しないでください」

 最後は鋭い目を向けて、厳しい口調で私に釘をさすように言い、大場さんは颯爽と去っていった。

 なにも言えなかったし、言葉ひとつ返すことさえできなかった。