「よかった、今日もお姉さんがいて!」

「あ……こんにちは」

 困惑しながらも挨拶したが、自分の顔が引きつっているのがわかる。どうしよう、うまく笑えないよ。

 しかし、彼女は気づいていないのか私の目の前で足を止めると、笑顔で話し始めた。

「お姉さんのおかげで好きな人とたくさん話せたし、今度ゆっくりふたりで食事でもしながら着物のことを教えてくれるって言ってくれたんです」

「えっ?」

 彼女の言う好きな人って大翔のことだよね? 大翔、食事をする約束をしたの? それもふたりで?

 信じられない話に驚きを隠せない中、彼女は続ける。

「そういえば私、自己紹介がまだでしたよね。すみません、大場天音と申します」

 名前を告げられた手前、自分も自己紹介したほうがいいと思い、「私は……」と言いかけた時、彼女、大場さんが声を被せた。

「松雪桜花さんですよね?」

「え? どうして私の名前を……?」

 名乗ってもいないのに名前を知られていることに困惑する。すると大場さんはにっこり微笑んだ。

「上杉さんがお見合いしたって聞いて、居ても立っても居られずプロを雇って調べさせていただきました」

 思いがけない話に耳を疑う。