今日も屋敷のお庭に来ていた。実はまたお花の種類が増えたんです。サミット後に王妃様がピぺリメを一つ持っていっていいわよって言い出して。いやいや、国の重要植物でしょって事で丁重にお断りして代わりに違う花を貰った。

 まぁ、そっちも天然記念植物なんだけど。だからうちの庭師さんが丹精込めて育ててくれている。押し花にしていいわよと許可を頂いたけれど、これは切手にしか使えないな。天然記念物をアクセサリーにしちゃダメでしょ。

 そんな時、目撃してしまったのだ。

 庭に倒れている人物を。


「だっ大丈夫ですかっ!!」


 駆け寄ってみたけれど……倒れている人物は目を開けているようで。何匹も小鳥が指や体などに乗っている。え、なにこれ。これは一体……


「あの、パトラさん?」

「何?」


 いや、何? じゃないでしょ。何してるんですか。


「な、何をしていらっしゃるんです?」

「日向ぼっこ」

「そ、ですか……」


 芝生になっている場所に、仰向けで寝っ転がっている。日向ぼっこには、まぁ、最適な天気だけれど……こんな所で寝転がっているとさっきの私みたいに倒れてると思われちゃいますよ。


「貴方もどう?」

「え”」

「気持ちいいわよ」


 ちゅんちゅん、と来ていた小鳥たちも私を見てくる。え、まさか人間の言葉分かっちゃってる?

 仕方なく、マリアにレジャー用の布を持ってこさせた。さぁ、一度立ち上がってください。と何とかパトラさんに立ってもらい、芝生の上にレジャー用の布を敷いた。

 さぁどうぞ、とパトラさんに寝てもらい、私も横に座った。遠慮しなくていいのよ、と言われてしまったので渋々私も布の上に寝転がった。うん、確かに気持ちいい。

 隣のパトラさん、肩とかに小鳥さん乗られちゃって大丈夫なのかな、とも思ったけれど楽しそう。とっても絵になる。

 確か彼女は動物愛好家だったっけ。動物達の為に法律まで作っちゃうくらいだもんね。

 流れる心地いい風。目の前に広がる雲一つない青空。太陽の光が照らされてとても暖かい。

 ……やばいな、これは。寝ちゃいそう。


「あぁ、後で紡績糸(ぼうせきいと)を売ってる店に連れてってちょうだい」

「糸、ですか?」

「えぇ、お金はあるから」


 確か、刈った動物の毛で綺麗な織物を作ってるんだっけ。すっごく人気みたい。

 実はその織物をこの前プレゼントされてしまった。確かに光沢があってとっても手触りもいいし何より軽かった。見た事のない模様だったけれど、とっても綺麗だった。

 お母様は、リアさんに頼んであれを洋服にしてくれると言ってくれた。リアさんも、あの種類の布は中々手に入らず見た瞬間に目を輝かせていたらしい。それだけ凄いものを貰ってしまったって事よね。

 でも、何もないのに糸で何を作るんだろう。


「観光も飽きちゃった」

「あ、なるほど。糸で何を作るんですか?」

「ドイリー」


 ドイリーとは、糸で編みこまれた敷物の事だそうだ。ルーチェリン王国でも、それが流行っているみたい。というか、パトラさんが流行らせた、が正解かも。


「私は元々パパティラ民族出身なの」

「民族、ですか」

「私達パパティラ民族の者達が知っている独特の編み方で作ったドイリーなどで生計を立てていたの」


 編み物! へぇ~だから糸だったのね!

 現物は見た事ないけれど、一体どんなものなんだろう。楽しみだなぁ。そう考えていたら、知らず知らずに寝落ちしてしまった。


 それに気が付いたのは、夕方。肌寒くなってきそうだったからマリアが起こしてくれたみたい。今は秋になる手前だから肌寒い時期がやってくる頃。

 寝たのはお昼ご飯後だったから……結構な時間寝ちゃってたって事だよね。うわぁ、寝すぎちゃって夜眠れなそうかも。

 隣にいたパトラさんはまだ熟睡中。気持ちよさそうに眠っているけれど、もう寒くなっちゃうから起こさなきゃ。


「おはようございます、パトラさん」

「お腹、空いた」


 おぉ、起きて開口一番にそれですか。まぁおやつ食べなかったし。

 さぁ、戻りましょうか。とパトラさんとマリア達と邸宅に戻ったのだ。



 次の日、私を捕まえたパトラさんはマリアが知っている紡績糸が売っているお店に訪れた。あれも欲しい、これも欲しい、と購入商品が沢山になってしまっていた。一体この糸はどんなものに大変身するのか楽しみだ。