今日もお母様に手伝っていただき郵便事業のお仕事中です。新しい郵便局を置く事になり今急ピッチで作っている最中です。

 2か所設けるつもりなんだけど、その中にはアドマンス領も含まれている。それは、ヴィスティウス大公閣下の提案があってそこを選んだのだ。

 色々な国から郵便ルートをこちらにも広げてくれと言われたけれど、とりあえずまずは島国であるミュレーンス王国との国際郵便を目標としようとお母様とお父様と決めたのだ。

 ここから領地に行くには馬車で4日。だけど最短ルートで馬を使えば3日もかからないらしい。もう片方の郵便局は4日くらいかかってしまうかな。でも人口が多い場所を選んだ。


「え、自転車?」

「はい、思った以上に自転車が大人気で、それを目当てに配達員志望をされる方が続出しています」

「なる、ほど」


 まさかここまで自転車が人気になるとは思いもしなかった。乗る為には練習が必要なんだけど、でも今の配達員さん達はとっても楽しそうに自転車に乗ってるみたい。

 配達中に、この乗り物は? と聞かれる事が多々あるらしくて。貸してくれ、って言われたりもするらしい。仕事道具なのでダメです、って断ってるみたい。


「え”っ、自転車販売!?」

「はい、馬よりも自転車の方が場所を取らないし使い勝手がいいとの事で、ぜひうちにも、と」

「なる、ほど……」


 でも、今は郵便事業で手が回らないから自転車はまだ販売できなさそう。こっちが落ち着いてから自転車の件は検討してみようかな。もしもっと言ってくるような人達がいればお母様達と要相談かな。

 あ、因みに言うと今滞在中の中村さんはここでまったり過ごしてるみたい。パトラさんは観光に行くと朝から護衛とメイドさんを引き連れて馬車で出かけて行った。お二人はどちらも自由人だなぁって最近感じてる。


「お嬢様、おやつですよ」

「え? 何それ」


 私の座っている作業机に置かれたのは……とっても魅力的なグラス。透明な縦長のグラスに、層がいくつも重なっている。そして一番上には……


「うそ……アイスだ!」

「ふふ、やっぱり言っていた通りですね」

「え?」

「これ、【なかむら】で渡されたものだそうです。お嬢様に、と」

「……ほんと?」

「えぇ、本当です。ようかんを買いに【なかむら】に行っていたメイドが、これをお嬢様に持っていくよう任されたと言っていました」

「……」


 これを、私に……これ、絶対大変だったよね。作るの。しかも、溶けないよう魔道具の携帯用保冷箱に入れて準備してあったらしい。用意周到ですな。
 
 実は今、サミットの影響で【お食事処・なかむら】のお客さんが多くなったって聞いた。もう毎日目が回るくらい大変らしい。

 サミット中にあった会食で振る舞われたのはスフェーン王国の料理。もう皆さん声を揃えて美味しかったと絶賛していたからそれを聞いた人達が殺到しているのだと思う。

 ナカムラ商会も今注文殺到で大変みたい。だからレストリス侯爵も手伝って下さってるみたいだってリアさんに聞いた。

 そんな中これ作ってくれたなんて。


「あと、言伝もありまして」

「え?」

「そのグラス、絶対に自分で返しに来るように。だそうです」

「あ、はは……」


 マジかぁ。まぁ、忙しくて【なかむら】に行けなかったってだけなんだけど。ちょっとはそっちも忙しそうだからって気持ちもあって行けなかった。

 勿論、最後のパーティーで約束したあのデートの約束も果たされていない。一応タクミは毎日早朝こちらに来てお父様に指南されているわけだけど、何故か会えない。この約束は一体いつ果たされるのだろうか。


「……美味ぁ~!」


 一番上にあるアイス、最高。バニラアイスかな、超濃厚。下には白玉と、あんこと、抹茶のゼリーかな? しかも生クリームもある。思ったんだけどさ、一体どうやって地球の食材を見つけてるんだろう。聞いてみようかな、中村さんに。すぐそこにいるし。

 甘いものは正義。うん、正論だわ。でもさ、これをカリナが聞いたらどうなるだろう。きっと羨ましがられると思う。同じもの作れってお願いしそう。

 でも、まずは仕事を頑張ってカリナと一緒に【なかむら】に行けるようにしなきゃ。そこからだよね。

 遅くなるとどっかの誰かさんが怒り出しちゃいそうだから、早く終わらせなきゃ。

 とりあえず、このパフェの感想をお手紙にしたためよう。超絶美味でした、ってね。あと、次の注文も書いてみようかしら。あ、プリンアラモードいいかも。ふふ、楽しみだなぁ。