「素敵な招待状をありがとう、アヤメちゃん」

「来てくださってありがとうございます、リアさん」

「アヤメちゃん、だいぶ凝って作ったのよ」

「もうとっても嬉しかったわ、壁に飾ってしまいたいくらいよ」

「えっ」


 今日は、ずっと準備していたパーティー当日である。招待客の皆さんは、声を揃えて頑張って作った招待状を褒めて下さった。

 レターセットと切手は今後販売はされるのか、とかも聞かれて。でもこれは特別に作ったから作る事は無い。その代わり、


「サミットを記念して新しい切手を作ったんです。期間を決めて販売する予定です」

「まぁ! それは楽しみですわ」

「わたくし、【フラワーメール】の切手は全種類持っているの。また購入させてもらうわね」

「ありがとうございます」


 ピぺリメの花のデザインをした記念切手を作ったのだ。これはカーネリアンを代表する花だからそれを選んだ。とても素敵な切手を作れたと思うから、皆さん気に入って下さるといいな。

 今回は、他国の方々を交えてのパーティーだから着ていらっしゃるドレスなどが皆さん違くて面白い。これが文化の違いっていうのね。


「アヤメちゃん!」


「え?」


 声をかけてきたのは、あ、ナナミちゃんだ! タクミに、中村さんに、二人のママさんであるナカムラ夫人。


「一緒に来たんだね」

「母上に引っ張り出された」


 あはは、そういう事ね。


「素敵なドレスね」

「スフェーンだと刺繍の施されたドレスが主流なのよ」


 確かに、とても綺麗な刺繍がされたドレスだ。ナナミちゃんのも、夫人のも本当に綺麗。


「私、アヤメちゃんのドレス姿初めて見た! とっても素敵!」

「ほんと? ナナミちゃんもとっても似合ってるよ」


 おにーちゃん! とそっちに話を振ってしまったけれど……顔、背けられてしまった。あらぁ? これはもしや。


「タクミ君、似合ってるよ! イケメンは何着ても似合っちゃうね!」

「……」


 グッジョブサイン出してみたんだけど、反応な……あ、耳赤くなってる。おっとっと、可愛いな。


「お前も似合ってる。……てか、お前元々美人だろ」

「……」

「照れたな?」


 お父様やお母様にはいつも褒められるけれど、いつもと違う人、一応彼氏の人に言われると何というか……ほんのちょっとだけ、恥ずかしいというか、何というか。



「アイツ、騙したのか」

「もぉ~お爺様酷い! おにーちゃんやっと言ってくっついたんだから!」

「ふふ、若いっていいわねぇ。そう思いませんか、アドマンス夫人」

「えぇ、自分の若い頃を思い出しますわ。アヤメちゃんには素敵な恋をしてほしいって思っていたんです、これで一安心ですわ」

「申し訳ありません、うちの息子は色々とやんちゃなんです」

「お前に似て、な」

「もうっ、お義父様ったら何てこと言い出すんです?」

「事実しか言ってねぇぞ」



 そんな事を言われているているとは私達は知らず。

 ふと、ナジアンス侯爵様が見えてちょっと行ってくるねと別れた。

 侯爵様は、ご夫人と一緒に来ていたみたいで挨拶を。私の事業をだいぶ絶賛してくださった。以前購入された【クローバー】のネックレスを今日も付けてきてくださったみたいで見せてくれた。

 事業についてお話がございますので後日手紙を送りますと伝えた。ミュレーンス王国のヴィスティウス家当主様との話の件だ。

 手紙は勿論【フラワーメール】で、だろう? と言われつい笑ってしまった。


 話は終わり、戻ろうとした時。ある男性に捕まってしまった。確か、伯爵様だったかな。色々と今回の事を絶賛してくださって。今日はずっとこの話ばかり。そこまで褒められると逆にプレッシャーになってしまうからやめてほしい。


「そういえば、ご令嬢にはもう相手がいらっしゃるのでしょうか?」


 伯爵の子息との縁談を断った事を言っているのだろうか。相手、婚約者とかそういう人だよね。いるにはいるけど……ここで言っていいのだろうか。

 私、一応貴族だし。しかも、この国で一番上の貴族。だから、お母様とお父様と相談して言ったほうがいいのかな。


「まだここに来たばかりですので」

「そうでしたか。まだご令嬢はこちらに来て数ヶ月しか経っていらっしゃらないのですから当たり前のことでしたね。失礼しました。
 でしたら、交流の場をご用意いたしましょうか。まだ貴族の子息達とそういった交流はないのでは?」


 そう来たかぁ……いやいや、そんなの要らないですよ。


「伯爵のご提案は嬉しいのですが、今は事業で忙しいのでまた今度でよろしいでしょうか」

「あぁ、それは失礼しました」


 一言二言会話を交わしてから、失礼しましたとその場を離れた。いや、逃げた、が正解か。

 それから、クララ様を発見した。一人だったみたいだから、とっても寂しかったらしい。私がお声をお掛けしたら、とっても喜ばれていて。


「今日は呼んでくれてありがとう、アヤメさん」

「いえ、来て下さって光栄ですよ」

「あのね、招待状がとっても素敵で気に入っちゃった。宝物にするね」

「そこまで喜んでくださって、嬉しいです。苦労して作った甲斐がありましたね」


 また近い内に一緒にお茶を飲みましょう、と約束をした。今度は何の切手を貼って送ろうかしら。


 そんなこんなで、パーティーも何事もなく終わりを告げたのだった。



 招待客達をお見送りして、残っていたタクミ達の所に戻ってきた時、何故かタクミが不機嫌だった。なんか、面白くなさそう。スフェーンの皆さんは会食の件とかで声をかけられてたし、タクミも女性達にだいぶ声をかけられていたからだろうか。


「どしたの」

「なんでもない」


 いや、何でもない訳ないでしょうが。ん~、ナジアンス侯爵様の所に行っちゃったから?


「疲れた?」

「いんや、お前の方こそ疲れただろ。さっさと帰れ」

「いやいや、主催者だから最後でしょ」

「……」


 あら、手、握ってきた。

 あ……もしかして、伯爵様との会話聞こえちゃった? いや、結構離れてた気がしたんだけど。内容までは聞こえてなかったと思う。


「何、嫉妬した?」

「悪いか」

「素直なのね、今日は。でも嬉しい」

「サミット終わったら一日付き合え」

「一日でいいの?」

「とりあえず!」

「あはは、はいはい」


 ふふ、楽しみだな。お母様に買っていただいたデート用のお洋服まだまだたくさんあるんだもん、もっとデートしなきゃ!