今回国際サミットとしてこちらに来る国の使節団はこの7ヶ国。

 タクミ達の出身国、スフェーン王国。

 スフェーン王国と絶交中の隣国セオリシア王国。

 以前セオリシア王国と喧嘩をしてしまった国、ラレスティン王国。

 今学院に留学中の王太子の出身国、オリコット王国。

 今年サミットの主催国になるはずだった国、ガナリアス王国。

 貿易で最も友好関係を築いている島国、ミュレーンス王国。

 そして今回、何故か参加させてくれとお願いしてきた国が一つ。ルーチェリン王国だ。しかも、その国は私の前に来た異世界人が現れた国でもある。

 一体どんな考えで今回参加をしたのか。うん、まぁ、恐らく私が理由でしょうね。はぁ、もう今から怖いよぉ。


「記念切手?」

「はい、国家的な行事があった時を記念して作られる切手の事です。今回のサミットを記念して作ってみたいなって思って」

「パーティーの招待状に使うのもいいわね。新しいレターセットは?」

「まだもう少しかかりそうです」


 そう、パーティーに使う招待状を新しいレターセットにしてみたいと提案して今作っている最中だ。他国からの王族の方々にも送らなければならないから、それも考えて品のある招待状にしたいと思っている。


「それで、お母様。聞きたい事があるんですがいいですか?」

「ん?」

「この国にしか咲いていない花を使いたいなって思っているんですが……それって王城の庭園にしか咲いてない、ですよね?」

「ピペリメの花? 確かに、あれは王城の庭園にしかないわね。もしかして、切手に使うつもり?」

「はい。でも、許可してくださるでしょうか……?」

「そうねぇ、でも今回の行事を記念して作る切手だから、きっと許可してくれると思うわ。むしろ、カーネリアンを象徴するピペリメの花を使ってくれる事に喜ぶんじゃないかしら」

「分かりました、じゃあすぐに王城にお手紙を出してみます」

「えぇ、マリアに言って用意してもらいなさい」

「はい」


 確か地球では、記念切手は普通切手とは違って数を決めて印刷して販売していた。今回も同じようにしたほうがいいと思うんだけど、一体どれぐらい印刷すればいいかな。また大量買いされたら大変だもんね。

 あ、一人何枚、とか? でも貴族の方が使用人一人一人に買わせたりしそうかも。ん~、難しいな。


 今日もお父様とお兄様は帰ってこなかった。あと、タクミ達もこちらに来る事はなくなった。忙しいとの事。毎日あった鍛錬もお休みだし。

 まぁ、忙しいのは分かるけれど、ちょっと寂しいかな。

 無事何事もなく、終わるといいな。

 そう思っていた時だった。


「……あ」


 ふと、窓の外が視界に入った。今は夜だから昼間より暗い。けれど、月が出てるからそんなに暗くはない。

 部屋のバルコニーに出た。天上には、大きな夜空。今日もとても綺麗な星々が輝いている。


「……これだ」


 すぐに走り出して部屋の呼び鈴を鳴らした。すぐに来てくれたマリアに、こう言った。


「カメラ、じゃなかった、景色を絵にする魔道具持ってきて!」

「え……い、今ですか」
 
「今すぐ!!」


 そう、それはフェリアス王立学院見学から帰って来て家族写真を撮った時に使ったあの魔道具だ。あれは、本当に綺麗な絵だった。本当に写真になってるんじゃないかってくらい繊細で色鮮やか。じゃあ、この夜空を撮るとどうなるだろうか。

 急いで持ってきてくれたマリア。それを受け取ってバルコニーに出た。


「……やった!」

「夜空、ですか?」

「うん!」


 良かった、綺麗に撮れてる。地球にあったカメラだと夜空を撮るには性能のいいやつを使わないと撮れなかったけれど、流石魔道具! とってもくっきりと撮れてる!


「確か、ピペリメの花って暗い場所にあると光るんじゃなかったっけ」

「そうです、環境上ここカーネリアンでしか咲かず、この大陸中でも光を放つ植物は3種類しかありませんから非常に珍しい植物ですね」

「じゃあこれを、パーティーに送る招待状のレターセットにしようかな」


 切手の方にピペリメの花をと思っていたんだけど……どうしようかな。切手の方は違うものの方がいいよね。


「ねぇマリア、王城って夜どんな感じ?」

「夜、ですか。そうですね……明かりとなる魔道具がいくつも並べられているので、とても明るいですよ」

「王城を撮るのにもってこいな場所ってある?」

「観光スポットとなっている場所はありますよ」

「じゃあ明日、そこに行ってもいい?」

「もしかしてお嬢様、夜に行くだなんて言い出しませんよね」

「あ、はは……ダメ?」

「……奥様の許可を頂いてください。私は何も言いませんよ」

「え~! マリアも説得してね!」


 なぁんて言いつつ、もう遅い時間だからとマリアは戻っていった。お早くお眠りくださいね、と念を押されて。

 絶対お母様反対するよね。じゃあ、何て言えば頭を縦に振ってくれるだろう。なぁんて考えていたら瞼がが重くなって意識を手放したのだ。



 次の日、お母様に昨日の事を伝えると……


「なるほど、いい案じゃない」

「じゃあ、今日の夜……」

「そうね……すぐに戻ってくるのであれば許可してあげるわ。でも、マリアとジルベルトの他にもウチの騎士団数人を連れて行きなさい」

「いいんですか!」

「えぇ、風邪をひかないよう暖かい格好で行くのよ」

「ありがとうございます、お母様!」


 すぐに下見に行き、夜に備えてすぐに戻ってきた。そして夜、もう一度向かい綺麗な写真を撮ってきました。


「わぁ……! とっても綺麗!」

「でしょう? 観光客の間ではとても人気なスポットなんです」

「昼間も綺麗な風景だったけれど、私としては夜の方が好きかも」

「とても幻想的ですね」

「うん」


 まだ、国王陛下に許可は貰っていないけれど、もしこの綺麗な景色で素敵な切手を作っていいのなら、絶対に皆に気に入ってもらえるものにしなきゃ。そう決心した。