その日の放課後は部活が早く終わったから、私はグラウンドに出てみることにした。運動部は道具の片付けミーティングなんかで文化部よりも部活が長引くことがある。それを知っている女子達が、部活終わりにグラウンドへ向かって走っていくのもいつものこと。
 今日もグラウンドにはたくさんの女子達が集まっていた。

「いるかな.........。」
 
 私は無意識に彼のことを探していた。人混みの奥の方........見つけた、私は彼の方をじっと見つめる。

『一、二、三.....』
 私は心の中で、数をかぞえる。七秒後....何か変化があることを信じて。
 その七秒は、とても長く感じた、この時間が、ずっと続くんじゃないかと思うほど長く。
 しばらく見つめていると彼がその視線に気がついてにこりと微笑んだ、私は慌てて目を逸らして....なんでもないような顔をして、グラウンドからの景色を眺めた。

 彼は気づいているのだろうか、自分の笑顔に人の心を奪うほどの魅力があることを。
 いや、きっと本人は気づいていないだろう、その笑顔を、私以外にも向けているんだから。

「はぁ.......。」
 
 思わずため息が出る、なんでもない顔をしているように見えて内心はすごく焦っている。
 泣きたいほどに私は彼に恋をしているんだ。
 あのドラマの主人公が言ったように、私は馬鹿になってしまったのかもしれない。

「もうそれでもいいや........」
 
 本当にそれでいい私の望みが叶うのならば、これ以上ないくらい馬鹿になってもいい。できることはなんだってするつもりだ。

 だからお願い、私を彼の一番にして下さい。
 
そして今度は君が私を、七秒見つめて。

 私はざわめく気持ちを抑える為に、大きく息を吸った。