「え、あれから進んだの?!ねぇどうなの?」

「まぁ、それなりにね。まだその子と話すとこまではいってない。今情報集めしてるとこ。」
 
 そう、本当に何も進んでいない。前に進むのが、とても怖いんだ。怖いけれど、このまま何もなしに青春を終わらせたくないって思っているのも事実。

「情報集めかぁ.......真面目だねぇ......。七ちゃんさ、もっとバカになってもいいんじゃない?」

 バカになる、か。確かに、今までの経験で恋には少し、いやだいぶ慎重になってしまっているかもしれない。もし仮に私がその子に恋しているとして、この先どうしていけばいいんだろうか?こんな曖昧なまま、人のことを好きになっていいんだろうか?

「ちょっと〜......ちょっと!聞いてるの?!部活始まるんだけど、遅れちゃったらどうするの??」
 
 また一人で考え込んでしまっていたらみたいで、彼女の声で現実に引き戻される。

「よかった。戻ってきた.....じゃあ私はそろそろ行くから。遅れちゃダメだよ?」
 そう言うと、彼女は走って部室へ向かって行った。あれこれ考えてもキリがないので、とりあえず私も音楽部の練習に向かうことにする。

 ✱✱✱

『それじゃあ、今日も始めましょうか。』
 顧問の先生の爽やかな声で、今日も練習が始まった。
 一通り曲を通して練習した後、各個人で練習することになった。私の担当する楽器はマリンバ。メロディを演奏することはあまりないけれど、先生が言うにはかなり重要なポジションらしい。
 個人練習は自分のペースでゆっくり進めていった。楽器ばかりに集中していると疲れるから、時々窓から見える景色を見て休憩した。

 窓の外....グラウンドでは、運動部の生徒が汗を流していた。私は、その中の一人の男の子が気になって仕方がない。

『じゃあもう一度通して今日は終わりにしましょう』
 
 先生の声で全員が一斉に演奏する体勢にはいる。

『じゃあ、一番最初しっかりね。』
 
 私は、これからどうしていけばいいんだろう。そんなことを考えながら、マレットを握った。