『恋ってバカにならないとできないんじゃないですか?』

 何年か前の恋愛ドラマの主人公のセリフだ。私はもう何年も恋愛をしていない。恋愛はしたいけれど、必ずと言っていいほど片思いや失恋で終わってしまう。最近は、恋愛をすることが怖くなってきている気がする。
 それなのに理想の恋愛を想像するものだから、自分で自分がおかしくて仕方がない。

「また考え事ですか〜?」

 ぼーっとしていると頭の上から声がする。同じクラスの美里ちゃんだ。美里ちゃんは高校に入学してからの友達で、ありがたいことに三年間一度もクラスが別になることはなかった。

「うん、まぁねー。」

『まぁ何考えてるかはだいたい想像つきますけどね』なんて笑いながら、美里ちゃんは私の向かいの椅子に腰掛ける。
『なによ〜、私だってぼっち卒業したいの〜。』なんて不貞腐れ気味に返すと、彼女は笑いながら『私だってぼっちですよ〜』なんてふざけたように返してくる。

「美里ちゃんにぼっちじゃないでしょ、湊くんがいるじゃないですか。」

 さっきふざけたように返されたから、私も同じようにふざ聞き方をしてみる。

「湊くん?あぁ.....あの子は違うよ、そういうんじゃない。」
 
彼女は、違うと否定しているけれど.....そのわりには、顔が赤くなっているから多分嘘なんだろうと思う。
 彼女の少し慌てたような顔をみながら、『いいなぁ、これが恋か.......。』って他人事のように考えている自分に少し笑えてくる。
 一番恋をすることを望んでいるのは自分自身なのに。

「そういえばさ、前に気になってるって言ってた子とはどうなったの?」

「えぇ??そんな事言ったっけ。」

彼女がふいにこんなことを聞いてきた。
私は、いきなり聞かれたのもあって曖昧にしか答えられなかった。やっぱり私に恋は難しい。