田辺が出したカードを見つめて、しばらく悩んで


「……別に好きでもないのに付き合うとか、そういうのってどうなの」


真帆はぽつりと呟く。


「全然ありでしょ。だって人の気持ちなんて、ちょっとしたことで簡単に変わるんだよ。いい意味でも、悪い意味でも」


カードから田辺へと、真帆はゆっくりと視線を移す。
真帆と目が合うと、田辺はにっこりと笑った。


「だからさ、無理して嫌いになろうとしなくてもいいんじゃない。好きな気持ちを無理矢理押し殺さなくてもさ。好きなら好きでいいじゃん。無理しない方が、きっと自然に気持ちも風化していくよ。それまで放っておいたらいいんだよ。一生変わらないものなんてないんだから。――特に、人の気持ちなんて」


真面目に言っているのか、それとも恋愛のスペシャリストを気取って適当に言っているのか、全く真意が読めないのは、真帆が田辺という男を知らないからなのだろうか。
それとも、元々わかりづらい男なのだろうか。
そんなことを考えながら出した“11”のカードは、テーブルに置くなり田辺に指差され、笑顔で「ダウト」と言われた。