せっかちだなあ、と笑いながら、田辺は「“4”」とカードを出す。真帆が出したカードに関して、悩む素振りは微塵もない。
反対に真帆は、田辺が出したカードを睨み付けてまた考える。その熟考中、田辺が何気ない調子で口を開いた。


「ところでさ、寝言で名前呼んでた彼、そんなに好きなのになんで別れたの」

「っ……はあ!?何で今そんな――……ていうか、考えてるんだから話しかけないでよ!」

「考えれば考えるほどわからなくなる、それがダウトというもの」


小癪な田辺を黙らせるように、真帆は「“5”!」とテーブルを叩くようにしてカードを出す。


「はい、“6”。それで、別れるに至った経緯は?遠慮せずなんでも話してくれていいんだよ。ほら俺、恋愛相談しやすいタイプみたいだから」

「どこがよ。大体私には、田辺くんに相談するようなことなんてありませんから!“7”」


まだ始まったばかりだというのに、既に真帆はやけくそ気味にカードを出す。最早考える集中力すら切れた。


「ほい、“8”。そんなことはないでしょ。むしろ、誰かに話してすっきりした方がいいこともあるんじゃないの。寝言で名前呼ぶなんて、相当強く心に残ってる証拠でしょ。それも、あんな寂しそうにさ。一瞬、泣いてるのかと思った」